遺産分割協議書の書き方と注意点
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遺産分割協議書の書き方と注意点
(読了目安:約10分)
大切な方を亡くされ、心よりお悔やみ申し上げます。
悲しみに暮れる中で、相続手続きという慣れない作業に直面し、心が追い立てられているかもしれません。「急がなければ」と焦りを感じることもあるでしょう。
でも、どうぞ深呼吸してください。
この「終活大全」では、あなたが少しでも安心して手続きを進められるよう、遺産分割協議書の作成について、分かりやすく丁寧に解説します。義務感に追われるのではなく、「できるときに、少しずつ」進められるよう、あなたのために情報を整理しました。
このページを読み終える頃には、遺産分割協議書の全体像が見え、次に何をすれば良いか、きっと安心できるはずです。

遺産分割協議書とは?なぜ必要なのか
遺産分割協議書(いさんぶんかつきょうぎしょ)とは、亡くなった方(被相続人)が遺した財産(遺産)を、相続人全員でどのように分けるかを話し合い(遺産分割協議)で決め、その内容をまとめた大切な相続書類です。
不動産の名義変更や相続税の申告など、様々な手続きで必要となります。知っておくと、後々の手続きがぐっとスムーズになります。
遺産分割協議書が求められる主なケース
遺産分割協議書が必要となるのは、主に以下の場面です。前もって把握しておくことで、焦らずに対処できます。
- 遺言書がない場合:亡くなった方が遺言書を残していなかった場合、誰がどの財産を相続するかを相続人全員で話し合い、合意する必要があります。その合意内容を証明するものが遺産分割協議書です。
- 遺言書の内容が不明確・不十分な場合:遺言書があっても、「全財産を長男に」といった漠然とした内容や、一部の財産についてしか触れられていない場合は、記載のない財産について改めて協議が必要になります。
- 遺言書と異なる内容で分割する場合:相続人全員が合意すれば、遺言書の内容と異なる分割方法を選択することも可能な場合があります。この場合も、新たな合意内容を遺産分割協議書として残します。
遺言書があっても協議書が必要な場合
「遺言書があるから遺産分割協議書は不要」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、弁護士の実務的見地から見ると、遺言書があっても遺産分割協議書が必要になるケースは少なくありません。
特に注意したいのが、遺留分(いりゅうぶん:一定の相続人に保障された最低限の相続割合)への配慮です。「全財産を長男に相続させる」という遺言書は一見有効に見えますが、他の相続人の遺留分を侵害している場合、遺留分侵害額請求(いりゅうぶんしんがいがくせいきゅう:侵害された遺留分に相当する金銭を請求すること)を受けるリスクがあります。
このような場合、遺留分に関する話し合いが生じ、その結果を遺産分割協議書にまとめる必要が出てくることがあります。遺言書の作成時には遺留分を必ず考慮することが鉄則とされています(民法第1042条〜第1049条)。
遺産分割協議書がないとどうなる?
遺産分割協議書がないと、以下のような不都合が生じる場合があります。
| 影響を受ける手続き | 具体的な問題 |
|---|---|
| 不動産の名義変更 | 登記名義の変更ができない |
| 預貯金の払い戻し | 金融機関が対応しないケースがある |
| 相続税の特例適用 | 小規模宅地等の特例・配偶者控除が使えない場合がある |
| 後日のトラブル防止 | 口頭合意では「言った・言わない」の争いに発展しやすい |
【関連】相続放棄の手続きについて詳しくはこちら
遺産分割協議書作成の流れと準備
遺産分割協議書を作成するまでの一般的な流れと、必要な準備を順を追って見ていきましょう。焦らず、一つずつ確認していただければ大丈夫です。
ステップ1:相続人の確定と連絡
まず、誰が相続人になるのかを正確に確定させることが大切です。戸籍謄本(こせきとうほん:本籍地の市区町村が発行する家族関係を証明する書類)などを集めて、相続人全員を漏れなく特定します。その後、相続人全員に連絡を取り、遺産分割協議を行う旨を伝えます。
ステップ2:相続財産の調査と評価
次に、亡くなった方がどのような財産をどれくらい持っていたのかを調べます。プラスの財産(預貯金・不動産・株式など)だけでなく、マイナスの財産(借金・ローンなど)もすべて洗い出すことが大切です。
| 財産の種類 | 調査・取得する書類 |
|---|---|
| 預貯金 | 残高証明書(各金融機関に請求) |
| 不動産 | 登記簿謄本・固定資産税評価証明書 |
| 株式・投資信託 | 証券会社の残高報告書 |
| 自動車 | 車検証・査定書 |
| 借金・ローン | 金融機関・消費者金融への問い合わせ |
もし亡くなった方に多額の借金があることが判明した場合は、相続放棄(そうぞくほうき:相続を丸ごと断念する手続き)を検討する余地があります。相続放棄ができる3ヶ月の期限は、死亡日からではなく「相続人が相続の開始を知った日」から起算されます(民法第915条)。また、借金の存在を知らなかった場合は、その事実を知った日から起算できるケースもあります(最高裁昭和59年4月27日判決)。「期限を過ぎてしまった」と安易に諦めず、早めに弁護士にご相談ください。家庭裁判所への伸長申請(きかんのしんちょうしんせい:期間延長の申立て)も可能です。
ステップ3:遺産分割協議の実施
相続人全員で集まり(オンラインでも可)、どのように遺産を分けるか話し合います。全員が納得できるまで、じっくりと話し合うことが大切です。
ステップ4:遺産分割協議書への署名・押印
話し合いで合意した内容を書面に正確に記載します。完成した遺産分割協議書は、相続人全員が内容を確認し、署名(自筆で名前を書くこと)と実印(役所に登録してある印鑑)での押印が必要です。実印を押す場合は、印鑑登録証明書(いんかんとうろくしょうめいしょ)も添付します。
遺産分割協議書の書き方と記載事項
遺産分割協議書は、法的な効力を持つ大切な書類です。後々のトラブルを防ぐためにも、正確かつ明確に記載することが求められます。
遺産分割協議書の基本フォーマット
決まった書式はありませんが、一般的には以下の項目を記載します。
- タイトル:「遺産分割協議書」
- 被相続人の情報:氏名・最後の住所・生年月日・死亡年月日
- 相続人全員の情報:氏名・住所・生年月日・被相続人との続柄
- 協議成立の旨:相続人全員で協議を行い、以下の通り合意した旨
- 具体的な遺産分割の内容:各財産について、誰が何をどれだけ相続するかを詳細に記載
- 清算条項:協議書に記載された以外の債権債務がないこと、後日新たな財産が発見された場合の対応など
- 作成年月日
- 相続人全員の署名・実印押印
財産の種類に応じた記載例
財産ごとに、特定できる情報を漏れなく記載することがポイントです。
不動産の場合
所在:〇〇県〇〇市〇〇町 地番:〇〇番〇〇 地目:宅地 地積:〇〇.〇〇㎡
家屋番号:〇〇番〇〇 種類:居宅 構造:木造瓦葺2階建
床面積:1階〇〇.〇〇㎡・2階〇〇.〇〇㎡
上記不動産は、相続人〇〇 〇〇が取得する。
預貯金の場合
〇〇銀行〇〇支店 普通預金 口座番号〇〇〇〇〇〇〇
上記預貯金は、相続人〇〇 〇〇が取得する。
株式の場合
株式会社〇〇 普通株式 〇〇〇株
上記株式は、相続人〇〇 〇〇が取得する。
自動車の場合
登録番号:〇〇〇 〇〇 〇〇〇〇 車名:〇〇 車台番号:〇〇〇〇〇〇〇
上記自動車は、相続人〇〇 〇〇が取得する。
不動産は登記簿謄本の記載と完全に一致させること、預貯金は口座番号まで明記することが大切です。曖昧な表現は後のトラブルの原因になる場合があるため注意しましょう。
認知症の親が作った遺言書の有効性について
弁護士の実務的見地から、よく誤解されるポイントをご紹介します。「認知症の診断を受けていた=遺言書が無効」というわけではありません。問題となるのは、遺言書を作成した時点で意思能力(いしのうりょく:自分の行為の結果を理解できる能力)があったかどうかです(民法第963条)。
軽度の認知症であれば、意思能力が認められるケースも少なくありません。有効性を高めるためには、公正証書遺言(こうせいしょうしょいごん:公証人が関与して作成する遺言書)の形式を選び、作成時のかかりつけ医の診断書やカルテを保存しておくことが、後の紛争防止に役立つとされています。
【関連】公正証書遺言の作成方法について詳しくはこちら
遺産分割協議書作成にかかる費用の目安
遺産分割協議書の作成には、自分で手続きを進めるか、専門家に依頼するかによって費用が異なります。あなたの状況に合った方法を無理なく選んでいただければ大丈夫です。
自分で作成する場合の実費
| 書類の種類 | 費用の目安(1通あたり) |
|---|---|
| 戸籍謄本・除籍謄本 | 450〜750円程度 |
| 住民票・印鑑登録証明書 | 200〜400円程度 |
| 固定資産評価証明書 | 200〜400円程度 |
| 登記簿謄本(登記事項証明書) | 480〜600円程度 |
| 郵送費・交通費 | 実費 |
| 合計(目安) | 数千円〜1万円程度 |
専門家に依頼する場合の費用相場
| 依頼先 | 業務内容 | 費用の目安 |
|---|---|---|
| 司法書士 | 協議書作成のみ | 約5万〜15万円 |
| 司法書士 | 協議書作成+相続登記 | 約10万〜30万円(実費別) |
| 弁護士 | 協議書作成・交渉含む | 約30万〜100万円以上 |
| 弁護士 | 調停・審判に発展した場合 | 着手金+成功報酬(別途) |
| 税理士 | 相続税申告 | 遺産総額の0.5〜1%程度が目安 |
※費用は事務所や案件の難易度によって異なります。複数の専門家から無料相談・見積もりを取ることをおすすめします。

遺産分割協議書作成時の注意点とトラブル回避策
遺産分割協議書は一度作成すると、原則として簡単にやり直すことはできません。ここでは、知っておくと安心できる注意点を丁寧にご説明します。
相続人の確定漏れに注意
もし後から「前妻の子」や「認知した子」など、漏れていた相続人が判明した場合、作成済みの遺産分割協議書は無効となり、再度協議をやり直す必要が生じます。これを防ぐために、亡くなった方の出生から死亡までのすべての戸籍謄本(除籍謄本・改正原戸籍謄本を含む)を綿密に収集することが不可欠です。
財産の評価は慎重に
特に不動産や非上場株式など評価が難しい財産については、不動産鑑定士や税理士などの専門家の意見を聞くことも選択肢の一つです。評価額の認識にずれがあると、後々「不公平だ」とトラブルに発展する場合があります。
未成年者がいる場合の対応
相続人の中に未成年者がいる場合、その未成年者の親権者(しんけんしゃ:法的に子を代理する権限を持つ人)が代理人として協議に参加します。ただし、親権者自身も相続人である場合は「利益相反(りえきそうはん:双方の利益が衝突する状態)」となるため、家庭裁判所に特別代理人(とくべつだいりにん)の選任を申し立てる必要があります。手続きに不安がある場合は、専門家に相談されることをおすすめします。
遺産分割協議書の訂正方法
誤りが見つかった場合、修正液や修正テープの使用は避けましょう。正しい訂正方法は以下の通りです。
- 誤りの箇所を二重線で消す
- 正しい内容をその近くに記載する
- 消した箇所に相続人全員の実印で訂正印を押す
- 複数枚にわたる場合は契印(けいいん:ページをまたぐ印鑑)も忘れずに
相続税申告の期限は前もって把握しておくと安心
相続税の申告が必要な場合、その期限は「相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内」とされています(国税庁・相続税の申告)。前もって知っておくことで、焦らずに対処できます。小規模宅地等の特例や配偶者控除など、節税につながる特例を利用する際には遺産分割協議書の添付が必要となる場合が多いため、税理士への相談も早めに行うと安心です。
| 手続きの種類 | 期限の目安 |
|---|---|
| 相続放棄・限定承認 | 相続開始を知った日から3ヶ月以内(伸長申請可) |
| 準確定申告(所得税) | 相続開始を知った日の翌日から4ヶ月以内 |
| 相続税の申告・納付 | 相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内 |
| 不動産の相続登記 | 相続を知った日から3年以内(2024年4月より義務化) |
【関連】相続税の申告・節税対策について詳しくはこちら
遺産分割協議書作成後の手続き
遺産分割協議書が完成したら、それを使って様々な相続手続きを進めることができます。
協議書を使った名義変更手続き
| 財産の種類 | 手続き先 | 主な必要書類 |
|---|---|---|
| 不動産 | 法務局(ほうむきょく) | 遺産分割協議書・戸籍謄本・印鑑登録証明書など |
| 預貯金 | 各金融機関 | 遺産分割協議書・通帳・印鑑など |
| 株式・投資信託 | 証券会社 | 遺産分割協議書・相続届など |
| 自動車 | 運輸支局(うんゆしきょく) | 遺産分割協議書・車検証・印鑑証明書など |
なお、2024年4月1日より不動産の相続登記が義務化され、相続を知った日から3年以内に登記を行わないと過料(かりょう:行政上の制裁金)が科される場合があります。前もって把握しておくと安心です。
相続税の申告と専門家への相談
遺産総額が相続税の基礎控除額(きそこうじょがく:3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合、相続税の申告が必要になります。申告期限の10ヶ月は、各種手続きを並行して進めると意外と短く感じられることもあります。相続税に精通した税理士に早めに相談することで、利用できる特例を漏れなく活用できる場合があります(国税庁・相続税の概要)。
よくある質問(FAQ)
Q1:遺産分割協議書に作成の期限はありますか?
協議書自体に法的な作成期限はありません。ただし、相続税の申告期限(相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内)や、不動産の相続登記義務(3年以内)との兼ね合いから、できるだけ早めに作成されることをおすすめします。長期間放置すると、相続人の高齢化や死亡により手続きがより複雑になるリスクがある場合もあります。
Q2:行方不明の相続人がいる場合はどうすればいいですか?
行方不明の相続人を除いて遺産分割協議を行うことはできません。まずは戸籍・住民票から住所を調査し、連絡を試みます。それでも連絡が取れない場合は、家庭裁判所に不在者財産管理人(ふざいしゃざいさんかんりにん)の選任を申し立てるか、失踪宣告(しっそうせんこく)を申し立てる方法があります。これらの手続きは専門的な知識が必要ですので、弁護士にご相談されることをおすすめします。
Q3:遺産分割協議書は何部作成する必要がありますか?
通常は相続人の人数分を作成し、各自が1部ずつ保管します。また、不動産登記や預貯金の名義変更など、手続きごとに原本の提出を求められることがあるため、予備として1〜2部余分に作成しておくと安心です。各相続人が署名・実印押印した原本を手元に保管しておくことが重要です。
Q4:遺産分割協議書はどこに保管すればいいですか?
紛失や破損を防ぐために、金庫や貸金庫など安全な場所に厳重に保管されることをおすすめします。また、コピー(写し)を別の場所に保管しておくと、万一の場合にも安心です。不動産登記など手続きに原本が必要なケースがあるため、原本は大切に管理してください。
Q5:自分で作成する場合、どんな点に気をつければいいですか?
費用を抑えられるメリットがある一方、財産の特定方法・遺留分への配慮・清算条項の記載など、専門的な知識が必要な部分も少なくありません。記載漏れや誤りがあると、手続きが無効になったり後々のトラブルの原因になったりする場合があります。不安な場合は、無料相談などを利用して専門家のアドバイスを受けることを、知っておくと安心な選択肢としてご紹介します。
Q6:相続人全員が遠方に住んでいる場合、どうすれば協議書を作成できますか?
全員が一堂に集まる必要はありません。協議の内容をメールや電話などで合意したうえで、郵送による署名・押印の回送という方法が一般的です。ただし、全員の実印と印鑑登録証明書が必要なことに変わりはありません。手続きに不安がある場合は、司法書士や弁護士が代行・サポートしてくれますので、一人で抱え込まないでください。
まとめ
大切な方を亡くされたばかりで、遺産分割協議書という慣れない作業に向き合っていらっしゃる皆さんへ。本当にお疲れ様です。
この記事では、遺産分割協議書について以下のポイントを整理しました。
【遺産分割協議書作成チェックリスト】

- □ 相続人全員を戸籍謄本で正確に特定できたか
- □ プラス・マイナスを含めた相続財産をすべて調査・評価できたか
- □ 相続人全員で遺産分割の内容に合意できたか
- □ 被相続人・相続人の情報、財産の内容、分割方法が正確に記載されているか
- □ 相続人全員の署名と実印押印、印鑑登録証明書の添付ができているか
- □ 遺留分など、法的な注意点を考慮した内容になっているか
- □ 相続税の申告期限(10ヶ月)や相続登記の期限(3年)を把握しているか
- □ 作成した遺産分割協議書を安全な場所に保管したか
義務感に追われることなく、ご自身のペースで、できるときに少しずつ進めていただければ大丈夫です。
もし、ご自身での作成に不安を感じたり、相続人同士での話し合いが難しいと感じたりした場合は、一人で抱え込まないでください。弁護士・司法書士・税理士など、あなたの状況に寄り添ってくれる専門家が必ずいます。多くの事務所では初回無料相談を実施していますので、まずは気軽に相談してみることをおすすめします。
「終活大全」は、これからもあなたの歩みに寄り添ってまいります。どうか一人で抱え込まず、困ったときはいつでもご活用ください。
【参考出典】
– e-Gov法令検索(民法・相続税法):https://laws.e-gov.go.jp/
– 民法第915条(相続の承認及び放棄をすべき期間)
– 民法第919条(相続の承認及び放棄の撤回及び取消し)
– 民法第963条(遺言能力)
– 民法第1042条〜第1049条(遺留分に関する規定)
– 最高裁昭和59年4月27日判決(相続放棄の起算点)
– 国税庁・相続税の申告:https://www.nta.go.jp/
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