大切な方がお亡くなりになり、悲しみの中にいらっしゃる中で、遺言書が見つからない、または遺言書がなかったという状況に直面し、不安や混乱を感じていらっしゃるかもしれません。今、何をしたらいいかわからない方へ。大丈夫です。焦る必要はありません。一つずつ、一緒に確認していきましょう。

遺言書がない場合 相続はどうなる?【まず今日やること3つ】
遺言書がない場合、日本の法律では「法定相続(ほうていそうぞく)」というルールに基づいて、誰がどれだけの割合で財産を相続するかが決まります。これは、故人様の意思が明確でない場合に、公平性を保つための仕組みです。しかし、その手続きは複雑に感じることもあるでしょう。
大丈夫です。焦らず、まずは今日できることから始めましょう。
今、何をしたらいいかわからない方へ
遺言書がない場合の相続は、多くの方が経験する一般的な状況です。一人で抱え込まず、まずは以下の3つのポイントを確認してみてください。
- 相続人の範囲を確認する
誰が相続人になるかは、法律で定められています。故人様の配偶者は常に相続人となり、その他の相続人は故人様との関係性(子、親、兄弟姉妹など)によって順位が決まります。 - 相続財産をざっくり把握する
預貯金、不動産、株式などのプラスの財産だけでなく、借金や未払金などのマイナスの財産も相続の対象です。まずは、故人様がどのような財産を持っていたか、大まかに確認しましょう。 - 相続放棄の可能性を頭に入れておく
もし故人様に多額の借金があることが予想される場合、相続放棄という選択肢も視野に入ります。相続放棄には期限があるため、この可能性を念頭に置いておくと、後の対応が変わってくることがあります。
まず今日やること3つチェックリスト
悲しいお気持ちの中、多くの手続きに直面して途方に暮れることもあるでしょう。まずはこのチェックリストを使って、今日できることを一つずつ確認してみてください。
□ 故人様の戸籍謄本(除籍謄本・改製原戸籍謄本を含む)を集め、相続人を特定する
□ 故人様の金融機関の通帳や郵便物を確認し、大まかな財産状況を把握する
□ 故人様に借金がないか、心当たりのある範囲で確認する(カード会社からの郵便物など)
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あなたの状況はどれ?(状況別・ケーススタディ)
遺言書がない場合の相続は、故人様の家族構成によって法定相続人が異なり、相続割合も変わってきます。ご自身の状況と照らし合わせて、どのケースに近いか確認してみましょう。
状況1:配偶者と子がいる場合
故人様に配偶者と子(実子、養子を問わず)がいる場合、配偶者と子が法定相続人となります。
相続割合は、配偶者が2分の1、子が2分の1です。子が複数いる場合は、子の2分の1をさらに子の人数で均等に分けます。
例: 故人、配偶者、子2人の場合
配偶者:財産の2分の1
子A:財産の4分の1(2分の1を2人で分割)
子B:財産の4分の1
状況2:配偶者のみの場合(子がいない)
故人様に子がなく、配偶者のみがいる場合、配偶者が法定相続人となります。この場合、故人様の直系尊属(父母、祖父母など)が存命であれば、配偶者とともに相続人となります。
例: 故人、配偶者、故人の父が存命の場合
配偶者:財産の3分の2
故人の父:財産の3分の1
状況3:子がいない場合(直系尊属がいる場合)
故人様に子がおらず、配偶者もいない場合、故人様の直系尊属(父母や祖父母など)が法定相続人となります。直系尊属が複数いる場合は、その中で最も近い世代の人が相続人となります。
例: 故人、故人の父・母が存命の場合
故人の父:財産の2分の1
故人の母:財産の2分の1
状況4:子も直系尊属もいない場合(兄弟姉妹がいる場合)
故人様に子も直系尊属もいない場合、故人様の兄弟姉妹が法定相続人となります。配偶者がいる場合は、配偶者と兄弟姉妹が相続人になります。
例: 故人、配偶者、故人の兄弟姉妹2人の場合
配偶者:財産の4分の3
故人の兄弟姉妹A:財産の8分の1(4分の1を2人で分割)
故人の兄弟姉妹B:財産の8分の1
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状況5:相続人全員が相続放棄を検討している場合
故人様に多額の借金があるなど、マイナスの財産がプラスの財産を上回る場合、相続人全員が相続放棄を検討することもあります。
弁護士によると、相続放棄の期限は「相続の開始を知った日から3ヶ月以内」です。 死亡日からではなく、相続人が被相続人の死亡を知った日が起算点となります。また、借金の存在を知らなかった場合、借金の存在を知った日から起算できるケースもあり、期限を過ぎても放棄できる場合があります。
⚠ 注意点: 3ヶ月の伸長申請(家庭裁判所)も可能です。放棄を検討するなら、早めに弁護士へ相談することをお勧めします。
✕ よくある誤解: 「3ヶ月過ぎた=放棄できない」は必ずしも正しくありません。事情によっては例外が認められることもあります。
(根拠: 民法915条・919条、最高裁昭和59年4月27日判決)
状況6:認知症の親が遺言書を作っていたが有効性が心配な場合
遺言書がない場合が前提ですが、もし認知症の親が遺言書を残していた場合、その有効性が問題となることがあります。
弁護士によると、遺言能力(意思能力)がない状態で作成された遺言書は無効です。 ただし「認知症=遺言無効」ではなく、作成時点の判断能力が問題となります。軽度認知症でも意思能力があれば有効な遺言は作れます。公証人が関与する公正証書遺言は、公証人が意思確認プロセスを経るため、有効性が高いとされています。
⚠ 注意点: 遺言作成時には、かかりつけ医の診断書やカルテを保存しておくと、後の紛争防止に役立ちます。
✕ よくある誤解: 認知症診断後は一切の法律行為ができないと思われがちですが、軽度であれば能力が認められるケースも多いです。
(根拠: 民法963条、判例多数)
遺言書がない場合の相続手続き|時系列の対応手順
相続手続きは、故人様がお亡くなりになってから少しずつ進めていきます。遺言書がない場合は、法定相続のルールに従い、相続人全員で話し合い(遺産分割協議)を進めることが一般的です。
| 時期 | やること | 窓口・担当者 | 期限 |
|---|---|---|---|
| 故人様の死亡直後〜1週間以内 | 死亡届の提出、火葬・埋葬許可証の取得、葬儀の手配 | 市区町村役場、葬儀社 | 死亡後7日以内 |
| 故人様の死亡後1週間〜1ヶ月以内 | 遺言書の有無の確認(公証役場・家庭裁判所など)、相続人の確定(戸籍謄本収集) | 公証役場、家庭裁判所、市区町村役場(戸籍担当) | 特になし(早めに着手) |
| 故人様の死亡後1ヶ月〜3ヶ月以内 | 相続財産・債務の調査、相続放棄・限定承認の検討・申述 | 金融機関、法務局、税務署、家庭裁判所、弁護士・司法書士 | 相続放棄・限定承認は「知った日」から3ヶ月以内 |
| 故人様の死亡後3ヶ月〜10ヶ月以内 | 遺産分割協議の実施、遺産分割協議書の作成 | 相続人全員、弁護士・司法書士 | 相続税申告期限の10ヶ月前まで |
| 故人様の死亡後10ヶ月以内 | 相続税の申告・納付、不動産の名義変更(相続登記) | 税務署、弁護士・司法書士・税理士、法務局 | 相続税申告は死亡後10ヶ月以内 |
相続財産の調査と確認
遺言書がない場合、まずは故人様がどのような財産を持っていたか、プラスの財産(預貯金、不動産、株式、自動車など)とマイナスの財産(借金、未払金、ローンなど)をすべて洗い出す必要があります。これは、遺産分割協議の前提となる重要な作業です。
遺産分割協議の進め方
相続人全員で、どの財産を誰がどれだけ相続するかを話し合うのが「遺産分割協議」です。遺言書がない場合、この協議が非常に重要になります。
弁護士によると、「全財産を長男に相続させる」という遺言書は一見有効に見えますが、遺留分(いりゅうぶん)を無視した内容だと、他の相続人から遺留分侵害額請求を受けるリスクがあります。 遺言書がない場合も、協議の際には、特定の相続人に過度に偏った内容にならないよう注意が必要です。遺留分は配偶者・子・直系尊属が対象で、兄弟姉妹には遺留分がありません(民法1042条)。
⚠ 注意点: 遺産分割協議がまとまらない場合は、家庭裁判所の調停や審判に移行することもあります。
✕ よくある誤解: 「遺言書があれば揉めない」は誤りです。内容次第では遺留分侵害額請求で争いが生じることがあります。遺言書がない場合も、協議の進め方によっては争いが生じることがあります。
(根拠: 民法1042条〜1049条)
遺産分割協議書作成の重要性
遺産分割協議で合意した内容は、「遺産分割協議書」という書面にまとめます。この書類は、不動産の名義変更(相続登記)や預貯金の払い戻しなど、その後のさまざまな手続きで必要となる重要な書類です。相続人全員が署名・捺印(実印)し、印鑑証明書を添付して作成します。
相続税の申告期限と注意点
相続財産の合計額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合、相続税の申告と納付が必要です。期限は、故人様がお亡くなりになったことを知った日の翌日から10ヶ月以内です。期限を過ぎると延滞税がかかる場合があるため、注意が必要です。
遺言書がない場合の相続にかかる費用目安
遺言書がない場合の相続手続きには、専門家への依頼費用や各種手数料がかかります。これらの費用は、相続財産の内容や手続きの複雑さ、依頼する専門家によって大きく異なります。
| 費用の種類 | 費用目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 戸籍謄本等の取得費用 | 数百円〜数千円程度 | 市区町村役場に支払う実費 |
| 不動産の名義変更(相続登記)費用 | 登録免許税:固定資産評価額の0.4% 司法書士報酬:数万円〜20万円程度 |
不動産の数や評価額、司法書士の報酬による |
| 遺産分割協議書の作成費用 | 数万円〜10万円程度 | 弁護士や司法書士に依頼する場合 |
| 相続財産調査費用 | 数万円〜数十万円程度 | 弁護士や司法書士に依頼する場合。財産の複雑さによる |
| 相続税申告費用 | 相続財産の0.5%〜1%程度(最低10万円〜) | 税理士に依頼する場合。財産額や複雑さによる |
| 弁護士への相談・依頼費用 | 相談料:5,000円〜1万円/30分程度 依頼費用:数十万円〜(事案による) |
遺産分割調停・審判など紛争解決を依頼する場合 |

費用の内訳と相場
上記はあくまで参考値・目安です。特に専門家への報酬は、依頼する内容や事務所の料金体系、地域によって大きく異なります。
費用を抑えるためのポイント
- 自分でできる手続きは自分で行う: 戸籍謄本の収集や金融機関への問い合わせなど、自分でできる範囲のことは自分で行うことで、専門家への依頼費用を抑えられます。
- 無料相談を活用する: 多くの弁護士事務所や司法書士事務所、また後述する公的機関では無料相談を実施しています。まずは無料相談で状況を説明し、必要な手続きや費用のアドバイスを受けるのが良いでしょう。
- 複数の専門家から見積もりを取る: 専門家によって費用体系が異なるため、複数の事務所から見積もりを取り、比較検討することをお勧めします。
夜間・休日でも相談できる窓口一覧
突然のことで、夜間や休日でも相談したいと考える方もいらっしゃるでしょう。悲しみや不安の中、一人で悩まずに、専門家や公的な窓口に頼ることは非常に重要です。

相談できる専門家と公的窓口
| 相談窓口 | 相談内容の例 | 受付時間・料金目安 |
|---|---|---|
| 弁護士 | 遺産分割の争い、相続放棄、遺留分侵害額請求など、法律問題全般。 | 平日9-17時が一般的だが、夜間・休日対応の事務所もあり。相談料:5,000円〜1万円/30分程度(初回無料の事務所も多い) |
| 司法書士 | 不動産の名義変更(相続登記)、遺産分割協議書の作成、家庭裁判所への書類作成など。 | 平日9-17時が一般的だが、夜間・休日対応の事務所もあり。相談料:無料〜数千円/30分程度 |
| 税理士 | 相続税の計算、申告、節税対策など。 | 平日9-17時が一般的。初回無料相談の事務所も多い。 |
| 法テラス | 経済的理由で弁護士費用が払えない方向けの無料相談や費用立て替え制度。 | 平日9-17時。無料(一定の条件あり) |
| 市区町村の法律相談 | 定期的に弁護士や司法書士による無料相談会を開催している場合が多い。 | 月に数回など不定期。無料。詳細は各自治体へ確認。 |
※夜間・休日対応の専門家は、ウェブサイトなどで確認するか、直接問い合わせてみましょう。
無料相談の活用
多くの専門家事務所では、初回無料相談を実施しています。まずはこのような機会を活用し、ご自身の状況を説明して、どのような手続きが必要か、どれくらいの費用がかかるかなどのアドバイスを受けることをお勧めします。無料相談だけでも、今後の見通しが立ち、安心感を得られるはずです。
弁護士、司法書士、税理士の役割
- 弁護士: 相続人同士の争いがある場合や、相続放棄・遺留分侵害額請求など、法律的な紛争解決が必要な場合に頼りになります。
- 司法書士: 不動産の相続登記(名義変更)や、遺産分割協議書の作成、家庭裁判所への提出書類の作成など、手続き面でサポートしてくれます。
- 税理士: 相続税の計算や申告、節税対策など、税金に関する専門知識を持っています。
それぞれの専門家が異なる分野のプロフェッショナルです。ご自身の状況に合わせて、適切な専門家を選ぶことが大切です。
感情的に辛いときの現実的な対処法
大切な方を亡くされたばかりで、心身ともに疲弊している方もいらっしゃるかもしれません。相続手続きは精神的な負担も大きく、冷静な判断が難しいと感じることもあるでしょう。
無理せず休むことの重要性
悲しみの中で、すべてを完璧にこなそうとすると、心身のバランスを崩してしまう可能性があります。手続きには期限があるものもありますが、まずはご自身の心と体を休ませることが最も大切です。無理せず、できるときに、少しずつ進めていきましょう。
信頼できる人に頼ること
家族や親しい友人など、信頼できる人に話を聞いてもらうだけでも、気持ちが楽になることがあります。また、手続きの一部を代わりに進めてもらうなど、具体的なサポートをお願いすることも検討してみてください。
専門家を頼るメリット
専門家は、相続手続きのプロフェッショナルです。複雑な書類作成や法的な判断をすべて任せることで、ご自身の負担を大きく軽減できます。感情的に辛いときこそ、専門家のサポートを受けることで、冷静かつスムーズに手続きを進められるでしょう。一人で抱え込まず、「専門家に頼る」という選択肢があることを忘れないでください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 遺言書がない場合、必ず遺産分割協議が必要ですか?
はい、遺言書がない場合、原則として相続人全員で遺産分割協議を行い、誰がどの財産を相続するかを話し合って決める必要があります。話し合いがまとまったら、遺産分割協議書を作成します。ただし、相続人が一人だけの場合や、すべての財産が法定相続分通りに分割できる場合は、協議が不要なケースもあります。
Q2. 遺産分割協議がまとまらない場合はどうなりますか?
遺産分割協議がまとまらない場合、まずは家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることができます。調停では、調停委員が間に入り、相続人同士の話し合いをサポートします。それでも合意に至らない場合は、審判手続きに移行し、最終的に裁判官が遺産分割の方法を決定します。
Q3. 遺言書がないと、相続税は高くなりますか?
遺言書の有無が直接相続税の金額に影響を与えるわけではありません。相続税は、相続財産の総額や法定相続人の数、適用される各種控除によって決まります。ただし、遺言書がないために遺産分割が長引くと、相続税の申告期限に間に合わず、特例(配偶者控除など)が適用できないなどの不利益が生じ、結果的に納税額が増える可能性はあります。
Q4. 故人に借金があることが後からわかった場合、どうすればいいですか?
故人に借金があることが後から判明した場合でも、相続放棄の期限内(原則として「相続の開始を知った日」から3ヶ月以内)であれば、家庭裁判所に相続放棄の申述を行うことができます。期限を過ぎてしまっても、借金の存在を「知った日」から3ヶ月以内であれば認められるケースもありますので、早急に弁護士に相談することをお勧めします。
Q5. 遺言書がない場合でも、特定の人に財産を多く残す方法はありますか?
遺言書がない場合、基本的に法定相続分に従って遺産分割協議を進めます。しかし、相続人全員の合意があれば、特定の相続人が多く財産を取得することも可能です。また、生前に贈与を行ったり、生命保険の受取人を特定の人に指定したりする方法も考えられますが、それぞれ税金や手続きの注意点がありますので、専門家への相談が不可欠です。
まとめ|全部は無理。今日は1つだけ
遺言書がない場合の相続は、不安や疑問が多く、複雑に感じるかもしれません。しかし、多くの人が経験することであり、適切な手続きを踏めば、一般的に解決への道筋が見えてきます。
大切なのは、一人で抱え込まず、焦らず、できることから一つずつ進めることです。今日、この記事を読んで、少しでも不安が和らいだなら、それは大きな一歩です。
まずは「今日やること3つ」のチェックリストの中から、一つだけでも行動に移してみてください。それが、故人様への供養にもつながるはずです。もし、手続きに迷ったり、感情的に辛いと感じたりしたときは、遠慮なく専門家を頼ってください。

遺言書がない場合の相続手続きは、ご家族の状況によって大きく異なります。まず相談するだけでも、具体的な手続きや費用について理解が深まり、焦らずに次のステップを検討できます。
【関連】遺言書の種類と選び方について詳しくはこちら
この記事の監修について
本記事は「お葬式.info 編集部」が、行政書士・司法書士・葬儀業界経験者・僧侶を含む監修者チームの助言のもと、公的統計・法令・専門書を根拠に作成しています。個別のケースについては、必ず専門家にご相談ください。編集方針・監修者一覧は編集ポリシーをご確認ください。
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