最終更新日:2026年1月1日 / 次回更新予定:2027年1月
大切な方を亡くされたばかりの方、あるいはご自身の終活を考え始められた方にとって、遺言書はご自身の想いを未来へと繋ぐ大切な手段です。法制度は複雑に感じられるかもしれませんが、ご自身の状況に合わせて準備を進めることで、残されるご家族への負担を減らし、安心して未来を迎えられます。
2026年に遺言書制度に関する大きな法改正は予定されていませんが、近年行われた重要な改正点や、実務上の注意点を改めて確認することは非常に大切です。このガイドでは、遺言書に関する最新のポイントをわかりやすく解説し、あなたやご家族が安心して手続きを進められるようサポートします。

遺言書に関する2026年の変更点まとめ(ひと目でわかる)
2026年に遺言書制度そのものに直接関わる大きな法改正は予定されていません。しかし、近年行われた相続法改正(2019年施行など)は、遺言書の作成やその後の相続手続きに今も大きな影響を与え続けています。これらの改正点を踏まえ、2026年以降も変わらず押さえておくべきポイントを、変更前後の比較で見ていきましょう。
| 項目 | 旧制度(例:2019年以前) | 新制度(例:2020年以降) | あなたへの影響 |
|---|---|---|---|
| 自筆証書遺言の保管方法 | 自宅保管が原則。紛失・改ざんリスクあり。 | 法務局での保管が可能に(自筆証書遺言書保管制度)。 | 遺言書の安全性・確実性が大幅に向上。家庭裁判所での検認手続きが不要に。 |
| 遺留分侵害の請求方法 | 遺留分減殺請求(現物返還が原則)。 | 遺留分侵害額請求(金銭請求が原則)。 | 不動産など分けにくい財産を無理に分ける必要がなくなり、遺産分割が円滑に。 |
| 預貯金の仮払い制度 | 遺産分割前は原則不可。 | 一定額の預貯金仮払いが可能に。 | 相続開始後の当面の生活費や葬儀費用などに充当でき、急な出費に対応しやすくなった。 |
| 配偶者居住権の創設 | 配偶者が自宅に住み続けるには、自宅を相続するなどの対応が必要。 | 配偶者が終身または一定期間、自宅に無償で住み続けられる権利(配偶者居住権)が創設。 | 残された配偶者の住居の安定が図られ、安心して生活を送れるようになった。 |
前年との比較|何がどう変わったか
前述の通り、2026年に遺言書に関する直接的な法改正はありません。しかし、近年の相続法改正は、遺言書作成の実務や相続手続きに大きな変化をもたらしました。特に「自筆証書遺言書保管制度」の導入は、遺言書の利用を促進し、その安全性を高める上で画期的な変更点です。
この制度により、これまで自宅で管理し、紛失や改ざんのリスクがあった自筆証書遺言を、法務局が安全に保管してくれるようになりました。さらに、保管された遺言書は家庭裁判所での「検認(けんにん)」手続きが不要となり、相続開始後の手続きがスムーズになります。
また、遺留分制度の見直しも重要な変更点です。以前は「遺留分減殺請求」として現物での返還を求めることができましたが、現在は「遺留分侵害額請求」として金銭での解決が原則となりました(民法1042条〜1049条)。これは、遺産分割における争いを減らし、より円滑な解決を促すことを目的としています。
改正の背景・理由
遺言書制度を取り巻く法改正は、社会の変化に対応するために行われてきました。主な背景としては、以下のような点が挙げられます。
- 高齢化社会の進展: 高齢化が進む中で、遺言書の作成を希望する人が増え、その利便性や安全性を高める必要がありました。
- 多様な家族形態への対応: 少子化や再婚家庭の増加など、家族のあり方が多様化する中で、個々の事情に応じた遺言のニーズが高まりました。
- 遺産分割の円滑化: 不動産などの分けにくい財産を巡る相続争いを減らし、相続人同士の紛争を未然に防ぐための工夫が求められました。
- 残された配偶者の生活保障: 配偶者が住み慣れた自宅で安心して暮らせるよう、居住権を保護する制度の創設が望まれました。
これらの背景から、遺言書の保管制度や遺留分制度、配偶者居住権の創設など、多岐にわたる改正が行われたのです。
あなたへの影響チェックリスト(対象者別・□形式)
遺言書は、作成する人の状況によってその重要性や留意点が大きく異なります。ご自身の状況に照らし合わせて、遺言書作成や見直しの必要性を確認してみましょう。

あなたの状況別:遺言書作成・見直しチェックリスト
□ 相続人が複数いる場合、特定の相続人に多く財産を渡したい、または均等に分けたい意向がありますか?(弁護士によると、遺言書で『全財産を長男に相続させる』と記載しても、遺留分を無視した内容であれば、他の相続人から遺留分侵害額請求を受けるリスクがあるため注意が必要です。特に配偶者や子には遺留分があります(民法1042条)。遺言書作成時は必ず遺留分を考慮し、他の相続人の権利にも配慮した内容にすることが実務上の鉄則です。遺言書があれば揉めないという誤解もありますが、内容次第では遺留分侵害額請求で争いが生じる可能性も指摘されています。)
□ 相続財産に不動産や事業用資産など、分けにくいものが多いですか?
□ 事業を承継する予定の相続人がいますか?
□ 内縁の妻や夫、再婚相手の連れ子など、法定相続人ではない人に財産を残したいですか?
□ 認知症の診断を受けている、またはその可能性がある親がいますか?(弁護士の見解として、認知症の親が作成した遺言書の有効性は、作成時点での『遺言能力(意思能力)』があるかどうかが重要とされています。軽度の認知症であれば、意思能力が認められ有効な遺言を作成できるケースも多いとのことです(民法963条)。後の紛争を避けるためにも、遺言作成時にはかかりつけ医の診断書やカルテを保存しておくことが推奨されます。)
□ 特定の相続人が多額の借金を抱えている、または相続放棄を検討していると聞いていますか?(相続放棄の期限について、弁護士は『相続の開始を知った日から3ヶ月以内』と強調しています。被相続人の死亡日ではなく、相続人が死亡の事実と自身が相続人であることを知った日が起算点です。また、借金の存在を知らなかった場合など、特定の事情があれば、借金の存在を知った日から起算できるケースもあり、期限を過ぎても放棄できる場合があるとのことです(民法915条・919条、最高裁昭和59年4月27日判決)。検討するなら早めに弁護士に相談し、必要に応じて家庭裁判所への伸長申請も視野に入れるべきでしょう。)
□ デジタル資産(オンライン口座、SNSアカウント、暗号資産など)の扱いを決めていますか?
□ 遺言執行者(遺言書の内容を実現する人)を選任したいですか?
□ 遺言書作成後、家族構成や財産状況に大きな変化がありましたか?
□ 遺言書の内容について、家族に相談しにくいと感じていますか?
実務への影響|何を変えればいいか
遺言書に関する法改正や実務の変更は、私たちがどのような準備をすべきかに直結します。
遺言書の種類と選び方
遺言書には主に「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があります。
- 自筆証書遺言: 全文を自分で書き、署名・押印する遺言書です。手軽に作成できますが、形式不備で無効になるリスクや、紛失・改ざんのリスクがあります。法務局の保管制度を利用すれば、これらのリスクを軽減できます。
- 公正証書遺言: 公証役場で公証人が作成する遺言書です。形式不備で無効になる心配がなく、原本が公証役場に保管されるため安心です。ただし、費用がかかり、証人2名が必要です。
- 秘密証書遺言: 内容を秘密にしたまま、存在だけを公証人に証明してもらう遺言書です。利用されることは稀です。
ご自身の状況や財産の内容、希望する手続きの確実性などを考慮して、最適な種類を選びましょう。特に、複雑な内容や争いのリスクがある場合は、公正証書遺言の作成を検討し、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
【関連】「遺言書の種類とそれぞれのメリット・デメリット」について詳しくはこちら
遺言書作成・見直しの費用目安
遺言書の種類や、専門家への依頼の有無によって費用は大きく異なります。あくまで参考値・目安としてご参照ください(地域・業者によって大きく異なります)。
| 項目 | 費用目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 自筆証書遺言(自己作成) | 0円 | 自分で作成する場合は費用はかかりません。 |
| 自筆証書遺言(専門家指導) | 数万円程度 | 弁護士や行政書士に作成指導や内容チェックを依頼する場合。 |
| 自筆証書遺言保管制度 | 3,900円(法務局手数料) | 遺言書1通につき。別途専門家への依頼料が発生する場合もあります。 |
| 公正証書遺言(公証役場手数料) | 数万円〜数十万円程度 | 遺産総額や相続人の人数、内容の複雑さで変動します(例:1億円以下の財産で5万〜10万円程度)。 |
| 公正証書遺言(専門家依頼費用) | 10万円〜30万円程度 | 弁護士や行政書士に公正証書遺言の作成を依頼する場合。公証役場手数料とは別にかかります。 |
| 遺言執行者報酬 | 遺産総額の1〜3%程度(最低20〜30万円) | 遺言執行を専門家(弁護士など)に依頼する場合。 |

専門家への相談を検討するケース
- 遺留分を考慮した複雑な内容の遺言書を作成したい場合
- 認知症の親の遺言能力に不安がある場合
- 相続人同士の不和が予想される場合
- 相続放棄を検討している相続人がいる場合
- デジタル資産の取り扱いなど、特殊な財産について記載したい場合
わからないことがあれば、最寄りの弁護士や司法書士、行政書士などの専門家にご相談ください。
すでに手続きを済ませた人への影響
過去に有効な遺言書を作成している場合、法改正によってその遺言書が直ちに無効になることは基本的にありません。しかし、法改正によって遺言書の内容が意図しない結果をもたらす可能性はあります。
例えば、遺留分制度の見直し(遺留分減殺請求から遺留分侵害額請求へ)は、遺言書の内容そのものを変えるものではありませんが、その後の請求方法や解決方法に影響を与えます。また、配偶者居住権の創設など、新しい制度ができたことで、遺言書に記載がなくても配偶者の権利が保護されるケースもあります。
そのため、すでに遺言書を作成済みの方も、数年に一度は内容を見直し、現在の法制度やご自身の状況の変化(家族構成、財産状況など)に合わせて修正や再作成を検討することをおすすめします。特に、相続に関する不安がある場合は、専門家にご相談ください。
今後さらに変わる可能性
遺言書や相続に関する法制度は、社会情勢の変化に合わせて今後も見直される可能性があります。特に注目されるのは、デジタル化の進展です。
現在の法律では、遺言書は書面で作成することが原則ですが、将来的には「デジタル遺言」の導入や、遺言書の電子保管、オンラインでの手続きなどが検討される可能性もゼロではありません。また
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