「子供がいない夫婦にとっての終活」と聞くと、どのようなイメージをお持ちでしょうか。もしかしたら、「残された人に迷惑をかけたくない」といった不安や、「一体何から手をつければいいのか」という迷いを感じていらっしゃるかもしれません。
2026年現在、少子高齢化が進む中で、子供がいない夫婦がご自身の終末期や死後に備えることは、以前にも増して重要なテーマとなっています。ご自身の希望を明確にし、パートナーともよく話し合い、計画的に準備を進めることで、不安を解消し、より安心してこれからの日々を過ごすことができるでしょう。
この記事では、子供がいない夫婦が考えるべき終活のポイントを、相続、医療・介護、老後の生活という3つの視点から、読者の皆様に寄り添う形で具体的に解説します。
相続の準備|大切な財産を託すために
お子さんがいらっしゃらないご夫婦の場合、万が一のことがあった際の相続は、一般のご家庭とは異なる点を考慮する必要があります。大切な財産がご自身の希望しない形で分配されてしまうことのないよう、事前の準備が不可欠です。
遺言書で意思を明確に
まず、法務省が定める法定相続人について理解しておくことが重要です。お子さんがいらっしゃらない場合、ご夫婦の一方が亡くなると、残された配偶者だけでなく、亡くなった方の親や祖父母(直系尊属)、あるいは兄弟姉妹が法定相続人となります。
例えば、夫が亡くなり、夫の両親もすでに他界しているが、夫に兄弟姉妹がいる場合、妻は夫の財産の4分の3を相続し、残りの4分の1は夫の兄弟姉妹が相続することになります。もし、ご自身の財産を配偶者にすべて残したいと望むのであれば、遺言書を作成しておくことが大切です。
遺言書にはいくつか種類がありますが、ご自身の意思を確実に実現するためには、公証役場で作成する「公正証書遺言」がおすすめです。費用は遺産額や内容によって異なりますが、数万円から十数万円程度が目安となります。作成の際には、司法書士や弁護士といった専門家に相談すると良いでしょう。
遺言執行者と死後事務委任契約
遺言書で財産分与の意思を示しても、実際にその内容を実行してくれる人がいなければスムーズに進まないことがあります。そこで、「遺言執行者」を指定しておくことが有効です。遺言執行者は、遺言書の内容に従って、遺産の調査、財産目録の作成、預貯金の解約、不動産の名義変更などを行います。信頼できる方や、専門家(弁護士・司法書士など)に依頼することが一般的です。
また、遺言書では法的な財産に関する事柄しか指定できません。葬儀の形式、納骨先、SNSアカウントの閉鎖、賃貸物件の解約といった「死後の事務」については、「死後事務委任契約」を別途締結することで、信頼できる方や専門家(弁護士・司法書士など)に委任することができます。これにより、残された配偶者の負担を減らし、ご自身の希望通りの最期を実現しやすくなります。
【参考】法務省、国税庁、公証人役場
医療・介護の備え|自分の意思を尊重してもらうために
老後の生活や万が一の事態に備え、医療や介護に関するご自身の希望を明確にしておくことも、終活の重要な柱です。
リビングウィル(尊厳死宣言書)と任意後見制度
延命治療に対する考え方や、万が一意思表示ができなくなった場合の医療方針について、事前に書面で意思を表明しておく「リビングウィル(尊厳死宣言書)」を作成しておくことを検討しましょう。これは法的な拘束力を持つものではありませんが、ご自身の意思を医療関係者や家族に伝える重要な手段となります。作成後は信頼できる人に預け、保管場所を共有しておくと良いでしょう。
また、将来的に判断能力が低下した場合に備えて、「任意後見制度」の利用も視野に入れておくことをおすすめします。これは、ご自身が元気なうちに、将来の財産管理や医療・介護に関する契約などを代理してもらう「任意後見人」を、公正証書で契約して定めておく制度です。厚生労働省もこの制度の活用を推奨しています。
任意後見契約を締結する際には、司法書士や弁護士といった専門家のアドバイスを受けることで、より確実に希望を反映させることができるでしょう。費用は契約内容や専門家によって異なりますが、契約作成に数万円から数十万円、後見開始後の報酬は月額数万円が目安となります。
介護施設の情報収集
将来、介護が必要になった際に備え、早めに介護施設やサービスに関する情報収集を始めることも大切です。夫婦で話し合い、どのような施設や環境を希望するのか、費用はどのくらいかかるのかなどを調べておきましょう。地域の地域包括支援センターや、民間の介護相談窓口なども活用できます。
【参考】厚生労働省、法務省
老後の生活設計と万が一の備え|安心して日々を送るために
お子さんがいらっしゃらない場合、老後の生活や万が一の事態に備え、ご夫婦で協力し、経済面や生活面での計画を立てておくことが、安心して日々を送る上でとても大切になります。
経済的な基盤を整える
老後の生活を支える経済的な基盤は、終活の根幹をなすものです。年金収入に加え、退職金、預貯金、個人型確定拠出年金(iDeCo)やNISAなどを活用した資産形成について、定期的に夫婦で見直し、老後資金の計画を立てましょう。
また、医療費や介護費は将来的に増大する可能性があります。現在の健康状態や将来のライフプランを考慮し、適切な保険に加入しているかどうかも確認しましょう。ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談し、具体的なシミュレーションを行うことも有効です。
社会とのつながりを大切に
お子さんがいないご夫婦にとって、社会とのつながりは孤独感を軽減し、生活の質を高める上で非常に重要です。地域コミュニティ活動への参加、趣味のサークル、友人との交流など、積極的に社会と関わる機会を増やしましょう。
また、万が一のときに頼れる友人や知人を増やしておくことや、見守りサービスなどの利用も選択肢の一つです。お互いの友人関係や、もしもの際の連絡先などを共有しておくことも大切でしょう。
エンディングノートを活用する
法的な効力はないものの、「エンディングノート」はご自身の希望や大切な情報をまとめておくための非常に有効なツールです。遺言書では書ききれない、よりパーソナルな思いや希望を綴ることができます。
- 病気になった時の治療方針、延命治療の希望
- 葬儀やお墓に関する希望(場所、形式、費用など)
- 介護が必要になった場合の希望
- ペットの託し先
- 友人・知人の連絡先
- 資産(銀行口座、証券、不動産など)や負債に関する情報
- デジタル資産(SNSアカウント、ネット銀行のパスワードなど)
- 感謝のメッセージや伝えたいこと
これらを記しておくことで、残された配偶者や、死後事務を引き受けてくれる方の負担を大きく軽減し、ご自身の想いを伝えることができます。
専門家への相談|不安を解消し、着実に進めるために
終活は多岐にわたる内容を含み、一人で全てを完璧に準備するのは難しいと感じることもあるかもしれません。そのような時こそ、専門家の力を借りることをためらわないでください。
- 司法書士・弁護士:遺言書の作成、任意後見契約、死後事務委任契約、相続に関する法的な相談に対応してくれます。
- 税理士:相続税対策や生前贈与に関する相談など、税金面でのサポートをしてくれます。
- ファイナンシャルプランナー(FP):老後の生活設計、資産運用、保険の見直しなど、経済的な視点からアドバイスをくれます。
多くの専門家が初回無料相談を実施していますので、まずは気軽に相談してみてはいかがでしょうか。費用は契約内容によって様々ですが、数万円から数十万円程度が目安となります。信頼できる専門家を見つけ、一つずつ着実に準備を進めていきましょう。
お子さんがいらっしゃらないご夫婦にとっての終活は、時に孤独を感じるかもしれませんが、それは決して悲しいことではありません。ご夫婦で力を合わせ、ご自身の希望を形にし、残りの人生を自分らしく豊かに生きるための大切な準備です。この情報が、皆様の終活の一助となれば幸いです。
【参考情報】
法務省、厚生労働省、国税庁、公証人役場